レジオネラ感染症について

 集団院内感染の原因はレジオネラ菌だった。

1996年1月 東京都新宿区の慶応大学病院で、レジオネラ菌による院内
        感染が原因で、新生児3人が肺炎や気管支炎を起こし、う
        ち1人が死亡新生児室の給湯設備の湯からレジオネラ菌が
        見つかったが、給湯タンクの湯からは検出されておらず、
        タンクから蛇口までの配管の途中で菌が増殖していたとみ
        られる。同病院の給湯設備の温度は60度に設定してあり
        、蛇口付近の水温は50度まで下がっていた。また、ミル
        クの加温器、加湿器などからも菌が検出され、加湿器によ
        って病室(新生児室)に充満した結果、集団感染した可能性
        があるとみられている。

●過去の感染例

 1976年7月 米国フィラデルフィアのホテルでの元軍人の大会で182人が急性肺炎の症状を訴
         え29人が死亡した集団感染があった。(当時は原因不明であった。)
         これより「在郷軍人病」とも呼ばれる。レジオネラは在郷軍人会の意味
 1980年11月 長崎医大で激症肺炎で死亡した患者の肺組織からレジオネラ菌を分離した。

 1994年4月 大阪市立大が湯治(温泉)での発熱でレジオネラ感染の可能性があると日本感染症学
         会で報告。
         レジオネラ肺炎の患者を調べたら、発病直前に温泉に行った人が数人いた。
         北海道から九州まで13道県の温泉40カ所の湯を調査したら4割にあたる17
         カ所に菌(100ml当たりコロニー数 1000個以上1カ所、3桁台8カ所、2桁台8
         カ所)を、検出した。
         菌が地中で泉脈に混じったり、土ぼこりとして湯船に飛び込み、60度以下の、
         温泉の湯温で生き延びている。(60度以上または、酸性が強いと菌は死滅する)

 1994年8月 東京・渋谷の民間ビルで45人の患者が発生する集団感染があった。
         いずれも成人で症状は軽かった

●国内での感染状況

厚生省研究班の調査による 昭和54年以降から平成4年まで合計
  国内での感染者   感染者 86人 死亡 26人
  院内感染    院内感染者 19人  死亡 10人
                     死亡率53% 死亡率高い
  国内の病院の約7割の空調冷却塔から菌が検出された

●原因菌と環境

   レジオネラ症は、Legionella Pneumophilaをはじめとし、土中や池などアメーバに寄生して
   いる細長い細菌が原因で発症する。身近にいる細菌だが、空調設備の水の中などに紛れ込む
   などして繁殖し、空気中の細かい水滴と一緒に肺の中に吸い込まれ高熱や肺炎を引き起こす。
   感染すると、食細胞に食菌されるが、殺菌されず逆にこれらの食細胞内で増殖する。人から
   人には感染せず、60度以上の熱で死ぬとされている。国内ではこれまでに、ビルの屋上の
   空調設備の冷却塔内の水や温泉の湯を介して感染した例が報告されている。
    感染のハイリスクグループ 免疫機能が弱った高齢者、男性、喫煙者、飲酒家
                   免疫抑制剤療法を受けている患者
    欧米でも病院内で入院患者らが感染する院内感染例が報告されている。

●対策

     レジオネラ菌は自然界に普通にいる細菌で完全に取り除くことは不可能なので、空調用の冷却
   塔、給湯器など増殖しやすい場所をこまめに点検し、消毒するなど菌の増殖を防ぐ。
   空調用の冷却塔の場合、コロニー数が1000以上だと対策が必要とされる。

●菌の特徴

   ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌、レジオネラ属には30種以上の菌種が存在する。
   従来の細菌培地に発育せず、鉄とL-システィンを含んだB−CYE寒天培地、WYO寒天培地
   によく発育。グラム染色性が弱い。診断は血清学的方法(間接蛍光抗体)などによる。
   種々の酵素を産生し、特にβ-lactamaseを産生する。ヒトのマクロファージや好中球に食菌さ
   れるが殺菌されにくく、むしろこの中で増殖する。(ペニシリンや第一世代のセフェム系抗生剤
   は無効・セフェム系やアミノ配糖体系は食細胞への移行が不良)

●症状

  1)ポンティアック熱型(Pontiac fever type)
    主症状は発熱で、悪寒、筋肉痛、倦怠感、頭痛などの感冒様症状を伴う。
    胸部X線写真では肺炎像を認めない。
    多くは7日以内に無治療で回復する。
2)肺炎型(pneumonia type)
      通常の潜伏期2〜10日。悪寒、高熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛などが前駆症状で、消化器症
    状や中枢神経症状を伴うことがある。乾性咳嗽、血痰、胸膜痛など明らかな肺炎症状を呈し
    て急速に悪化する。
    胸部X線写真では肺胞湿潤影が急速に進行し、胸水貯留が伴うことが多い。

●治療

 抗菌薬療法が中心、細胞内寄生菌であるため、食細胞内に移行性の高い
 マクロライド系、 ニューキノロン系、 テトラサイクリン系、リファンピシンを使う。
軽症     クラリス 200mg  1錠   1日2回
       ルリッド 150mg  1錠   1日2回
中等症〜重症 注射用エリスロシン 0.5-1g  1日2-3回点滴静注
  クラビット 100mg 1−2錠 1日2−3回
       ミノマイシン 100mg  100-200mg 1日1回点滴静注
       リファジン又はリマクタン150mg 2-3カプセル 1日1回
(注)臨床経過が速いので、疑診の段階で有効な抗菌薬の投与を開始し、中等症
  以上では2剤以上の併用が必要。

 参考資料 今日の治療指針 1996版 P149
      産業経済新聞 1996.7.10     卸DI実例集 V-P66
      朝日新聞 1996.7.10、1994.4.5  薬事新報 No.1890(1996)

岐阜県薬剤師会ホ−ムペ−ジに戻る