よく知られているように、痛風発作の好発部位は足の親指の付け根であるが、その他にも手指やアキレス腱、膝、足の甲などに起きることがある。発作は突然に起こり、激しい痛みと炎症が持続する。通常、1度に痛むのは1つの関節だけで、2つ以上の関節が同時に痛むことは非常にまれである。病初期であれば放置しても2〜3日でおさまる場合が多く、軽い場合は2〜3時間の発作で終わることもある。しかし、治療をしないと年に1〜2回の発作を繰り返し、数年のうちに尿酸の結晶が皮膚に析出し、関節の変形、骨の破壊、心臓・腎臓・脳の血管障害を起こすこともある恐ろしい病気である。
患者の大半は男性が占める。エストロジェンに尿酸排泄促進作用があるため、女性は血清尿酸値が低く、高尿酸血症は稀である。
正常なヒト男性体内の尿酸の全量は約1200mgと推定されている。1日平均の尿酸産生量は約 700mgであるため、全量の6割程度が1日で置き換わることになる。尿酸の排泄経路は大半が腎臓からの尿中排泄に占められる。
| 分類 | 内容 |
|---|---|
| 原発性高尿酸血症 | 明らかな原因が特定できないもの |
| 続発性高尿酸血症 | 白血病や一部の悪性腫瘍に続発するもの、薬剤の副作用によるもの、腎不全によるもの等、原因が明らかな高尿酸血症 |
・続発性高尿酸血症は全体の数%以下にすぎず、多くは原発性である。
※尿酸の動態による分類※
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分類 |
内容 |
|---|---|
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産生過剰型高尿酸血症 |
体内での尿酸の生合成が異常に亢進して生じるもの |
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排泄低下型高尿酸血症 |
尿中の尿酸排泄が低下して生じるもの |
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混合型高尿酸血症 |
両者が合併するもの ・排泄低下型が全体の約70%を占める。 |
高尿酸血症の発病に影響を与える因子としては、食事内容がすぐに思い浮かぶ。事実高尿酸血症患者には美食家が多いようである。しかし、実際は食事による影響は意外に少ないと言われる。先に述べたように、尿酸は体内での代謝に由来するものと食事に由来するものがあるが、後者の全体に占める割合は10数%程度であり、プリン体を多量に含有する食物を多く食べても尿酸値への影響は比較的少ないであろう。逆に、摂食制限により血清尿酸値を下げることも難しく、治療は薬剤で尿酸の産生を抑制するか、排泄を促進するかが主体となる。
影響は少ないとはいえ、薬物治療中の高尿酸血症患者は、やはり食事からの摂取も少なくすべきである。高プリン体含有食品には、エビ、ウニ、モツ、マガキ、アンキモ、シラコなど美食家が好みそうなものが多い。他にもイワシ、レバー、枝豆などがある。
肥満者に高尿酸血症が多いことは以前から知られていたが、最近の調査では、肥満指数と血清尿酸値との間に、高い相関関係が認められたという。
アルコール常習者にも高尿酸血症は多発するが、アルコール飲料の中ではビールが最もプリン体の含有量が多い。またアルコールは、それ自身にプリン体を含んでいなくても肝臓でのプリン体産生を促進する作用があるので、ビール以外の日本酒、ウイスキー 等も要注意である。果糖にも同様の作用があるので果物類を取り過ぎるのも好ましくない。
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薬剤名 |
商品名 |
常用量 |
主な副作用 |
|---|---|---|---|
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尿酸産生阻害剤アロプリノール |
ザイロリック,アロシトール等 |
200〜300mgを分2〜3 |
過敏症 |
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尿酸排泄促進剤プロベネシド |
プロベネミド,ベネシッド |
500〜2000mgを分2〜4 |
胃腸障害,過敏症 |
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尿酸排泄促進剤スルフィンピラゾン |
アンツーラン |
300mgを分3 |
胃腸障害,骨髄抑制 |
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尿酸排泄促進剤ベンズブロマロン |
ユリノーム |
25〜50mgを分1〜2 |
胃腸障害 |
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尿アルカリ化剤クエン酸ナトリウム,クエン酸カリウム |
ウラリット |
6錠(散剤は3g)を分3 |
高K血症 |
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尿アルカリ化剤炭酸水素ナトリウム |
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2〜5gを分3 |
胃酸の分泌過剰 |
排泄低下型の高尿酸血症に産生阻害剤のアロプリノールを投与すると、アロプリノールとその代謝物であるオキシプリノールは、尿酸と同じ排泄機構に依存して尿中に排泄されるので、通常の場合より薬物の血中濃度が上昇する可能性がある。また、産生過剰型の高尿酸血症に排泄促進剤を投与すると、尿中への尿酸排泄量が極端に増加して尿路 結石が発症しやすくなるので、やはり注意が必要である。
痛風はかつては日本ではまれな疾患であったが、現在の国内の患者数は約30万人と推計され、高尿酸血症患者はその5〜10倍にのぼるとされる。激痛を伴う関節炎発作ばかり注目されるが、高濃度の血中尿酸は腎臓、脳・冠血管をも侵すため、高尿酸血症全身性の重大な疾患である。痛風発作以外には自覚症状が乏しいので、長期にわたる薬物療 法の意義を十分理解させ、ノンコンプライアンスを起こさないように指導する必要がある。
痛風発作がおさまるまでは消炎鎮痛剤を服用し、尿酸排泄促進剤および産生阻害剤は服用を開始しないこと、服用初期に発作が一時的に増強する場合があること、水分を1日1000〜1500ml程度摂取して尿量を増やし、尿中への排泄を促進するように指導する。
尿酸値を高める可能性のある薬剤として以下のものが考えられるので、高尿酸血症を治療中の患者にこれらが処方されている場合は注意が必要となる。
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分類 |
商品名 |
|---|---|
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抗悪性腫瘍剤 |
5−FU、フトラフール、ユーエフティー、エンドキサン、フルツロン等 |
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6−MP製剤 |
ロイケリン、チオイノシー |
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イノシン製剤 |
イノシーF |
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ピラジナミド |
ピラマイド |
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エタンブトール |
エブトール、エサンブトール |
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サリチル酸製剤 |
バファリン、ミニマックス、サリチゾン、サンスポミン、EAC等 |
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レボドパ |
ドパストン、ドパール、ネオドパストン、メネシット、マドパー等 |
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薬剤名(A剤) |
薬剤名(B剤)[商品名] |
相互作用 |
併用時の注意 |
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|---|---|---|---|---|---|
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ベンズブロマロン |
プロベネシド |
スルフィンピラゾン |
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|
○ |
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ワルファリンカリウム[ワーファリン] |
B剤の作用を増強する可能性 |
プロトロンビン時間の測定等を行ない、B剤の用量に注意する |
|
|
○ |
○ |
B剤の減量等を考慮する |
||
|
|
○ |
○ |
経口糖尿病用剤 |
B剤の作用を増強する可能性 |
血糖値を確認して、B剤の減量を考慮し、慎重に投与する。低血糖に注意する |
|
|
|
○ |
インスリン |
||
|
|
○ |
○ |
サルファ剤[シノミン等] |
B剤の作用を増強する可能性 |
B剤の減量を考慮し、慎重に投与する |
|
|
○ |
○ |
アスピリン[バファリン等] |
A剤の尿酸排泄作用に拮抗する |
併用は避けることが望ましい |
|
|
○ |
|
セフェム系抗生物質 |
B剤の尿中排泄を抑制し、作用を増強する可能性 |
B剤の減量を考慮し、慎重に投与する |
|
|
|
○ |
ペニシリン系抗生物質 |
B剤の作用を増強する可能性 |
B剤の減量等を考慮する |
|
|
○ |
|
インドメタシン[インダシン等]パンテチン[パントシン等]アシクロビル[ゾビラックス]ジドブジン[レトロビル] |
B剤の尿中排泄を抑制し、作用を増強する可能性 |
B剤の減量を考慮し、慎重に投与する |
|
|
|
○ |
ピラジナミド[ピラマイド]サイアザイド系利尿剤[フルイトラン等]エタクリン酸 [エデクリル] |
A剤の尿酸排泄作用に拮抗する |
B剤を他剤に変更する等、併用を避けることが望ましい |
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薬剤名(A剤)[商品名] |
薬剤名(B剤)[商品名] |
相互作用 |
併用時の対策 |
|---|---|---|---|
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クエン酸Na・K[ウラリット] |
マンデル酸ヘキサミン[ウロナミン] |
尿のpH低下によりB剤の効果が減弱される可能性が高い |
【禁忌】併用を避ける |
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アルミニウム製剤 |
アルミニウムの吸収を促進し、蓄積させる可能性がある |
アルミニウムの蓄積に注意する |
|
|
炭酸水素Na |
牛乳.カルシウム製剤 |
大量のB剤との併用によりmilk alkali-syndrome(高Ca血症高窒素血症、アルカローシス)が現れることがある |
Ca、N、BEの検査値変動を確認する |
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薬剤(A剤)[商品名] |
薬剤(B剤)[商品名] |
相互作用 |
併用時の対策 |
|---|---|---|---|
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アロプリノール[ザイロリック][アロシトール]等 |
メルカプトプリン[ロイケリン]アザチオプリン[イムラン]シクロホスファミド[エンドキサンP] |
B剤の代謝を抑制し、骨髄抑制等の副作用を増強する |
B剤の用量を1/3〜1/4に減量する.白血球数、血小板数等の変動に注意する |
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ワルファリンK[ワーファリン] |
B剤の半減期を延長させる |
プロトロンビン時間の測定等を行ない、B剤の用量に注意する |
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クロルプロパミド[ダイヤビニーズ] |
血糖値を確認し、B剤の減量等を考慮して慎重に投与する低血糖に注意する |
||
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カプトプリル[カプトリル] |
過敏反応を起こしやすい |
注意する |
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キサンチン系薬剤[テオロング][テオドール]等 |
B剤の血中濃度が上昇する可能性がある |
B剤の中毒症状(悪心、振せん等)に注意し、必要時に血中濃度測定等を行う |
|
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鉄剤[フェロミア][インクレミン]等 |
肝への鉄蓄積量が増加する可能性がある |
併用回避が望ましい.止む終えない場合はB剤の減量 等を考慮する |
参考文献:薬局 vol.47,No.2
NHK「きょうの健康」から 痛風
日本医薬品集 '96.10